確率の加法定理とは?排反・重なりを例題で解説
確率の加法定理は、「事象Aまたは事象Bが起こる確率」を求める公式です。AとBが同時に起こる場合は、単純に二つの確率を足すと重なりを二重に数えます。そこで共通部分を一度引きます。排反なら重なりがないため、二つの確率をそのまま足せます。
確率の加法定理の公式
全事象をS、事象AまたはBが起こる事象をA∪B、AとBの両方が起こる事象をA∩Bと表します。加法定理の一般形は次のとおりです。
P(A∪B) = P(A) + P(B) − P(A∩B)
AまたはBの確率 = Aの確率 + Bの確率 − 両方が起こる確率
「または」は、数学では通常「Aだけ、Bだけ、両方」のいずれかを含みます。まずAの結果を数え、Bの結果も足すと、AとBの両方に入る結果は二回数えられます。その重複を一回分取り除くのが、共通部分を引く理由です。図では二つの円が重なる中央の領域がA∩Bに当たります。
| AとBの関係 | 共通部分 | 使う式 |
|---|---|---|
| 重なりがある | P(A∩B) > 0 | P(A)+P(B)−P(A∩B) |
| 排反 | P(A∩B) = 0 | P(A)+P(B) |
サイコロやよく混ぜたトランプのように、標本空間の各結果が同じ確率で起こる問題では、確率は「条件に合う結果の数÷全結果の数」で求められます。Aの結果数とBの結果数を足し、両方に含まれる結果を一度引く考え方は、この数え方にもそのまま当てはまります。分母を同じにそろえて計算すると、共通部分が分子のどこにあるかも見えやすくなります。
ただし、結果ごとの起こりやすさが異なるときは、単純な件数だけを比べてはいけません。各結果が持つ確率を使ってP(A)、P(B)、P(A∩B)を求め、同じ一般式に代入します。加法定理は等確率の問題だけに使う公式ではなく、事象の重なりを確率で整理する関係です。
結果を数え上げる問題では、AとBそれぞれの範囲を書き出して、共通する結果があるかを見ます。確率が分数で与えられている問題では、同じ共通部分を別に求められるか確認してから式に代入すると、足し過ぎを防げます。
排反なら足し算だけでよい理由
排反とは、二つの事象が同時には起こらない関係です。Aが起きた試行でBも起きることがないため、共通部分A∩Bは空集合になり、その確率は0です。一般式にP(A∩B)=0を入れると、引く項が消えて排反の場合の公式になります。
A∩B = ∅ のとき、P(A∪B) = P(A) + P(B)
この条件を満たすときだけ、重なりを引かずに足せます。
たとえば公正なサイコロを一回振り、「奇数が出る」と「偶数が出る」を考えます。奇数と偶数が同じ一回の出目になることはないので排反です。どちらかが出る確率は3/6+3/6=1で、全ての出目を数えた結果とも一致します。
「条件が違うから排反」と決めつけず、同じ結果が両方の事象に入るかを調べるのがポイントです。「赤いカード」と「絵札」のように分類の基準が異なっていても、両方を満たすカードがあれば排反ではありません。
例題1:サイコロで偶数または3の倍数が出る確率
公正な6面サイコロを一回振ります。偶数が出る事象をA、3の倍数が出る事象をBとすると、標本空間は{1,2,3,4,5,6}です。条件に合う出目をそれぞれ並べてから、重なりを確認します。
A = {2, 4, 6} なので、P(A) = 3/6 = 1/2
B = {3, 6} なので、P(B) = 2/6 = 1/3
A∩B = {6} なので、P(A∩B) = 1/6
P(A∪B) = 1/2 + 1/3 − 1/6 = 4/6 = 2/3
6は偶数でも3の倍数でもあるため、AとBは排反ではありません。単純に3/6+2/6=5/6とすると、出目6を二回数えています。共通部分1/6を引けば、実際に当てはまる{2,3,4,6}の4通り、つまり4/6と一致します。
この例題のように、サイコロの問題は条件に合う目を集合で書くと、重複の見落としを減らせます。先に確率を足すのではなく、各事象の要素と共通要素を確認してから式を作りましょう。
例題2:ハートまたは絵札を引く確率
ジョーカーを除く52枚のトランプから一枚を引きます。「ハートを引く」事象Aは13枚、「絵札(J・Q・K)を引く」事象Bは12枚です。ハートのJ・Q・Kの3枚は、AにもBにも含まれる共通部分です。
P(A) = 13/52、P(B) = 12/52
P(A∩B) = 3/52
P(A∪B) = 13/52 + 12/52 − 3/52 = 22/52 = 11/26
分子を足すだけなら25枚になりますが、ハートの絵札3枚が重複しています。そこを引くと、ハートのうち絵札でない10枚と、ハート以外の絵札9枚、共通部分の3枚を合わせた22枚です。最後に、分数は分子と分母を2で割って約分します。
「または」の範囲が明確でない文章題では、先に条件に合うものを表や集合で整理します。数え上げで確認した合計と公式で求めた結果が一致すれば、共通部分を正しく扱えたかの検算にもなります。
独立と排反の違い
独立と排反は、どちらも二つの事象の関係を表す言葉ですが、意味が異なります。独立は、一方が起きたかどうかで他方の起こりやすさが変わらないことです。排反は、二つが同時に起こらないことです。独立は影響の有無、排反は重なりの有無に注目しています。
| 用語 | 見る関係 | 代表的な式 | 例 |
|---|---|---|---|
| 排反 | 同時に起こるか | P(A∩B)=0 | 一回のサイコロで奇数と偶数 |
| 独立 | 互いに影響するか | P(A∩B)=P(A)P(B) | コインを二回投げた各回の表 |
コインを二回投げるとき、一回目に表が出る事象と二回目に表が出る事象は独立です。片方の結果はもう片方の確率を変えません。一方、一回のコイン投げで表と裏が出る事象は排反です。同じ一回の結果で表と裏を同時に出せないためです。
確率が0でない二つの事象は、同時に独立かつ排反にはなりません。排反ならP(A∩B)=0ですが、独立ならP(A∩B)=P(A)P(B)です。両方の確率が正なら積は0より大きくなり、二つの条件が一致しないからです。独立な事象の「または」も、共通部分を引く一般式で求めます。
間違えやすい点と計算手順
「または」と「かつ」を区別する
「AまたはB」は和事象A∪Bで、Aだけ・Bだけ・両方を含みます。「AかつB」は積事象A∩Bで、二つの条件を同時に満たす部分です。問題文の接続語を見落とすと、足す式と掛ける式を取り違えます。まず何を求めるのかを短く書き直すと、使う記号を選びやすくなります。
重なりを引き忘れない
共通部分があるのにP(A)+P(B)だけで終えると、重複した結果を二回数えます。特に「赤い」「絵札」「偶数」「特定の条件を満たす」のように、別の分類を組み合わせる問題は重なりを確認してください。結果を列挙できる場合はA、B、A∩Bを別々に書き出すのが確実です。
排反を確かめる
事象の名前が違うだけでは排反とは限りません。AとBの共通要素がひとつでもあれば、共通部分の確率を引きます。反対に、同じ一回の試行で同時には起こらないと確認できたときは、P(A∩B)=0として簡単な形を使えます。
確率の範囲で検算する
確率は0以上1以下です。答えが1を超えた場合は、分母のそろえ方、共通部分の控除、各事象の範囲を見直します。0より小さくなった場合も、AやBの確率と共通部分の大きさが整合しているか確かめます。割合をパーセントで表すときは、分数や小数の計算が終わってから100を掛けると混乱しにくくなります。
- 求める事象が「AまたはB」か「AかつB」かを確認する。
- AとBに当てはまる結果をそれぞれ整理する。
- 共通部分があるか調べ、排反ならその理由を確認する。
- 一般式に確率を代入し、分数を約分して0以上1以下か検算する。
「少なくとも一つが起こる」問題は、余事象を使うと簡潔になる場合もあります。ただし、余事象は別の考え方であり、独立かどうかの確認が必要な問題もあります。二つの事象の重なりを扱う基本は加法定理なので、式の対象をはっきりさせて使い分けましょう。
確率計算機との使い分け
確率の加法定理は、AまたはBが起こる一回の試行や、分類された結果の重なりを扱うルールです。一方、試行を何回も繰り返したときに少なくとも一回成功する確率や、ちょうどk回成功する確率は、独立試行や二項分布を使います。どちらも確率の計算ですが、何を数えているかが異なります。
成功確率と試行回数から反復試行を確認したい場合は、確率計算機を利用できます。期待値や分散を調べたい場合は期待値計算機、場合の数のnCrを整理する場合は組み合わせ計算が関連します。ツールの結果を使うときも、問題が和事象・積事象・反復試行のどれかを先に確認しましょう。
確率の加法定理に関するよくある質問
まとめ
確率の加法定理は、二つの事象の和事象を求める公式です。重なりがある一般の場合はP(A)+P(B)から共通部分P(A∩B)を引き、排反なら共通部分が0なので二つの確率を足します。独立と排反は意味が違うため、事象が重なるかどうかを先に確認してください。
例題では、出目やカードの条件を集合として書き、共通する結果を一度だけ数えることが大切です。公式に当てはめたあと、答えが0以上1以下かを確かめれば、確率の足し過ぎや数え漏れを見つけやすくなります。
参考資料
Masa
数学計算ツール運営者。数学の計算と学習向け解説を、途中式や例題とともに整理しています。
公開・最終更新:2026年11月4日